第3回レクチャー 「アフリカのイモ食-美味しさの秘密-」
講師:志和地弘信 東京農業大学教授(国際食糧情報学部 国際農業開発学)
2018年5月13日(日)13:00~15:00 JICA地球ひろば市ヶ谷
参加者:18名(農業専門家、会社員、主婦、教員など幅広い年齢層、仕事層のみなさまの参加がありました)
主催:アフリカ理解プロジェクト 記録:中井真弓
はじめに-アフリカ理解プロジェクト代表 白鳥くるみ-
アフリカ理解プロジェクトの活動が、小学校6年生の教科書(「新編 新しい社会6年下」東京書籍出版-平成27年度から-)に掲載されています。アフリカ理解プロジェクト代表へのインタビューという形で、「アフリカを多面的に捉える視点」を子どもたちに与える内容です。
教育の専門家によれば、小学校高学年で培われた世界認識は、その人の生涯にわたって大きな影響をもたらすとされています。(旧版)小学6年生教科書社会の記述は、欧米重視やプラスのイメージ表記がないアフリカなどの問題点が指摘されていました。
アフリカ理解プロジェクトが教科書に掲載された背景には、「日本が国際社会から尊敬されるためには、第三世界への対等な世界認識を持つ若者を育てなければならない」という教員の声があります。
15年前のプロジェクト発足当初から、アフリカの多面的な情報の提供や対等なパートナーシップ構築の必要性を提言してきた私たちの活動が、教科書掲載により一歩前に進んだと感じています。

【志和地先生のお話】の概要を以下にまとめました。

西アフリカのヤムイモは、世界の生産の96%を占める

食と食材に関心のある親子(小学生)も参加
1 アフリカ農業の特徴
・アフリカは広い!(砂漠地帯、半乾燥地帯、熱帯雨林、高地、乾燥地帯)
・穀類は世界的にみれば、トウモロコシを除くとイネとコムギが主流であるのに対して、アフリカではモロコシやミレット(雑穀に分類される)の生産が多い。
・世界平均では食用植物のうち穀類がイモ類の3.1倍も生産されているのに対して、アフリカではイモ類が穀類の生産を上回っている。
・イモ類では世界的にはジャガイモの生産が最も多いが、アフリカのジャガイモの生産量は世界の4.4%しかない。
・世界の生産量の中で、96.1%のヤムイモ(ヤマノイモ科の作物)、72.2%のリョウリバナナ、65.1%のタロイモ(サトイモ科の作物)、54.3パーセントのキャッサバ(マンジョカ、タピオカとも呼ばれる)がアフリカで生産されている。
・雨量の多い地域と少ない乾燥地など様々な地域があり、それぞれの土地にあった作物が栽培されている。乾燥がちで干ばつが心配な地域にもってこいの作物がイモ類。昔からアフリカの人々は野菜でも穀物でも、乾燥に強い作物を育て、備えてきた。(トウモロコシは、主食としてよく食べられているが、乾燥に弱いという欠点がある。)
作物を集約的に生産する世界的な農業の潮流に対し、アフリカの農業は自然環境に対応して多様性に富み、飢餓のリスクをさける工夫がなされていることに特徴がある。
2 アフリカの食文化
・アフリカの人たちが食べている食と食材
アフリカで多いのは、トウモロコシ(植民地化に伴って南米からトウモロコシが入り、主食になった。アフリカでは粉に加工し、主食として食される。乾燥に弱いのが欠点)。その他の主食:トウジンビエ、ササゲマメ(白茶色紫マーブル、塩ゆでしてたべたり、お米と炊いて食べたり、粉にしてドーナツにしたり)、ホウキモロコシ(ビールの原料になる)、フォニオ (厳しい環境でも育つ)、テフ、エンセーテなどがある。
・アフリカ生まれの野菜
★スイカ:エグシ(スイカ)の種で作られるシチューは、ナイジェリアの名物。甘くなくて種の多い品種(乾燥に強い、湿気の多い日本の夏のスイカ生育は奇跡ともいえる。平安奈良時代からの品種改良の賜物)。
★モロヘイヤ:鉄分豊富でシチューにする。
★オクラ:レディースフィンガーと英語でいうが、アフリカのものはかなり太い。乾燥野菜として備蓄。
★食用ハイビスカス:葉やつぼみを食用にする。
これらの食物は乾燥に強く、普通の植物が枯れる土中の水分量の限界)を超えても枯れない。すべてぬめりがある。このぬめりが乾燥に耐える仕組みに関係していると考える。

世界における作物研究の重要性

アフリカ生まれのオクラはこんな形!

参加者からのたくさんの質問には、参加している農業専門家からも解説が入り、深くわかりやすいレクチャーとなった。
3 アフリカのイモ食文化
世界に22に人しかいないヤムイモの研究者(なんとそのうちの8人は日本人!!)
・イモは1000種類以上ある
・ヤムイモとサトイモ(ミャンマー・バングラデシュ周辺が原産)には数千年の歴史がある。
・世界の農耕の中で、根菜農耕が最も古いとされている(中尾佐助)。
・ヤムイモは世界中にある。(一億年前に生まれたといわれる古代植物にはオスとメスがあるが、ヤムイモにもその特徴がみられること。大陸がつながっていたころに誕生し世界中に広がったと言われる)。
・ヒエ・モロコシなどが乾燥に強いが、食料増産のために、生産性の高いトウモロコシがイモ類に置き換わった。
・現在はトウモロコシとキャッサバ(南米原産)を植えるように指導されている地域もある。(乾燥に弱いトウモロコシと干ばつに強いイモ類の組み合わせ)。
・ナイジェリアでは、ヤムイモ解禁の日が決まっていて、それまで食べてはいけない。
結婚のお祝いとしても贈られる(昔はヤムイモ畑の広さが富を表わしていた)。
【イモの栄養価と機能性】
・アフリカでイモ類の葉が野菜として利用されている。キャッサバは貧しい人の食べ物といわれイモの栄養価が低いことが問題とされていた。しかしキャッサバの葉はビタミンやカルシウムを多く含み栄養価が高い。
・アフリカで地場野菜として食べられるサツマイモの葉は、オクラ、モロヘイヤ、ヒユナと同様に栄養価が高い。
・東アフリカで栽培される、中身がオレンジ色のサツマイモもビタミンAが豊富。簡単に栽培できる。干しイモも製造されるようになり、栽培面積が増えている。
・ヤムイモは、その秘められた機能性物質から、山のうなぎといわれ、栄養が豊富で夏バテにきく。他にも強壮(ヤムイモ栽培地域では双子が3.5倍も誕生しているとの調査結果もある)・美白・防カビ、サプリなどに使われている。
・ヤムイモは多くのアミノ酸を含むほか、細胞の代謝を活性化するディオスゲニン(ホルモン)も多く含み、ほかのイモ類にない特徴を有している。
在来の野菜やイモ類は長い栽培の歴史の中で人々にとって有用な成分を備えたものが残ったと考えられる。世界に300種以上あるとされるヤマノイモ属の植物はあまり調べられておらず、今後研究が進めばイモ類のさらに多様な利用が可能になるだろう。


ヤムイモとサトイモは数千年の歴史があり、日本にも日本原産のヤムイモ「ジネンジョ」がある。
<アンケート回答より>
- 世界からみたアフリカの食糧事情やイモ文化について、これまで全く知識のなかった私にもわかりやすく説明していただき、大変感謝しています。なぜ、乾燥に弱いトウモロコシがアフリカでも主流になりつつあり、キャッサバのようなイモが先進国に援助されないのか、その辺りの話もとても興味深かったです。(30代会社員)
- よく聞くまずしくて、良くないというイメージがあるアフリカにも、豊かですばらしい芋や植物がある事を知り、アフリカのイメージががらっと変わった。(~20代学生)
- 今回のお話を聞く前と聞く後でイモとアフリカのイメージがとても変わりました。今度イモを使ったアフリカ料理を作ってみようと思いました。(40代)
-作物として、食料として、文化として、いろいろな面から考えさせられるお話をありがとうございました。食事の中にとり入れて、親しみたいと思います。(40代)
- これからも様々な国の文化に触れられる企画をお願い致します。(40代)
- 知らない事だらけで、考えるきっかけを頂けて参加できたことに感謝しています(50代)
-おいもの他にも多くの作物のことが分かりました。成分の他にも育てることができる地域や、特徴、食べ方なども知ることができ、良い勉強になりました。(20代)
-とてもわかりやすくて、アフリカの食の理解につながりました。(50代)
これはアンケートの一部です。参加者のみなさまご協力ありがとうございました。
書籍、コーヒーや紅茶、ハイビスカスティなどのアフリカの食材、生産者とのコラボ商品などの展示販売コーナーも、毎回設けています。
イモを使ったレシピも載せています。
アフリカ料理の本:62の有名なアフリカンレシピ&物語






